風城峠の回顧録

ゲームや本、地学のことなど

2020年上半期に読んだ本10選

 上半期・・・が終わってからもう2ヶ月経とうとしている。だからこの記事は「今さら!?」て感じだ。本当は7月に書きたかったのだが、自分は大学生の身、課題やテスト、バイトに追われ、なかなか書く暇が無かった。夏休みに入ってからも、帰省したり遊びに行ったりしていたらどんどん時間が過ぎ、結果として8月の終わりに書くことになってしまった。

 

 昨年末、「個人的BOOKランキング2019」という記事を書いた。タイトル通り、2019年に読んだ本から10冊を厳選してランキングを作るといった内容だ。今年も年末にその記事は書くつもりである。しかし、今年は新型コロナウイルスのせいで春頃は自由な時間が増え、そのため本を読む時間も例年より増えた。つまり、今年は去年よりも多くの本を読んでいる。だから年末に10冊を選んでランキングにするだけでは、どうも紹介し足りない気がするのだ。

 

shikakuyama.hatenablog.com

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 というわけで、これから2020年の上半期に読んだ本から個人的に面白かった10冊を厳選して紹介していく。権威とか世間の評価とは関係なしに、あくまでも自分の好みのみを元にして選んだものである。全26作品の中から選出。なお、今回は順位をつけず、単に読んだ順に紹介していく。順位に関しては年末に作成する予定のランキングを楽しみに待っていて欲しい。また、「個人的BOOKランキング2019」ほど細かくは解説しない。できる限り簡潔に紹介していく。

 

 

 では、さっそく開始!

 

 

復活の日

小松左京・著 1964年

・読んだ期間 2020年1月7日~1月15日

・角川文庫

 

 ウイルスによって人類がほぼ滅亡してしまうという内容のSF小説。ウイルスと言えば、今年は新型コロナウイルスが世界に大混乱を巻き起こしているが、この小説を自分が読んだのはまだ日本にコロナの脅威が訪れていなかった1月上旬~中旬。まさか、この本を読んだ後に似たようなことが起こってしまうなんて思いもしなかった。今思えばあの頃はまだ平和だったな・・・。

 

 日常がじわじわと崩されていく様子が本当に恐ろしい。そして「日本沈没」でも感じたが、小松左京さんの脳内シミュレーション能力はとにかく凄い。55年以上前の小説なので、今の科学からすると古いなと感じることも多いが(これは仕方ない)、小松さんは様々な情報を噛み砕いて自分のものにする能力に非常に長けていると思う。それはもう感動するくらいに。彼によって生み出された世界には、実際に今回のコロナ禍でも見られたような事例がいくつも含まれている。とにかく、今だからこそ読んでおきたい小説だ。

 

 

復活の日 (角川文庫)

復活の日 (角川文庫)

 

 

 

「本陣殺人事件」

横溝正史・著 1946年

・読んだ期間 2020年2月1日~2月7日

・角川文庫

 

 記念すべき金田一耕助シリーズの第1作目。表題作の長さは約200ページ程と、かの有名な「八つ墓村」や「犬神家の一族」と比較するとやや小粒だが、それらに負けず劣らずの面白さである。ネタバレになるので言えないが、トリックも結末もインパクト絶大。古き良き国産ミステリーの大傑作だ。

 

 自分が読んだ角川文庫版には「車井戸はなぜ軋る」「黒猫亭事件」も同時収録されている。どちらも独特な味わいを残す作品でオススメ。車井戸~は面白いけれど後味が悪いかな。黒猫亭は終盤なかなか盛り上がる。

 

 

 

 

「少女地獄」

夢野久作・著 1936年

・読んだ期間 2020年2月16日~2月18日

・角川文庫、青空文庫

 

 日本三大奇書の1つ「ドグラ・マグラ」を書いた夢野久作のもう一つの代表作。3つの短編で構成されている。短いながら狂気具合は「ドグラ・マグラ」に決して負けてはいない。

 収録作品は、嘘をつきまくる女に翻弄される医師を描く「何んでも無い」、ある男に次々殺されていく女車掌の話である「殺人リレー」、悲惨な運命を辿った少女の復讐劇を描く「火星の女」の3つ。個人的には「火星の女」が一番衝撃的で恐ろしかった。内容に目をつむれば「ドグラ・マグラ」よりも相当読みやすいので、先にこちらを読んでみるのもありかもしれない。青空文庫で無料で読めるし。

 

 ちなみに、僕は「地獄少女」というアニメが好きなんだけど、それとこれとは全く関係がありません(笑)。まあドロドロとした世界観だけは似ているかもしれないけれど。「火星の女」の森栖校長は地獄に流されろって感じ。

 

 

少女地獄 (角川文庫)

少女地獄 (角川文庫)

  • 作者:夢野 久作
  • 発売日: 1976/11/29
  • メディア: 文庫
 

 

 

「とんび」

重松清・著 2008年

・読んだ期間 2020年3月5日

・角川文庫

 

 父親、ヤスさんと息子、アキラの親子の物語。重松さんの作品は小6の頃からずっと読み続けていて、かなりの数の作品を読んできたが、代表作と言える作品はこれにて全て読み終わったかな。

 

 序盤は平和な家族が描かれていただけに、「暗転」の章は怖くて仕方がなかった。またアキラが高校生になってからのヤスさんの言動や行動が衝撃的だったが、父親という者はいつの時代も時代錯誤なものだと思うと納得がいった。

 

 ちなみにこの頃Twitterで読書アカを作成した。だから、これ以降に出てくる小説は、Twitterにて一度紹介済みである。

 

とんび (角川文庫)

とんび (角川文庫)

 

 

 

十角館の殺人

綾辻行人・著 1987年

・読んだ期間 2020年3月15日~3月17日

講談社文庫

 

 ミステリーの名作として非常によく取り上げられる小説。ミステリー小説は好きだけれど基本的に同じ作者の作品ばかり読んできたので、僕はこの作品をそれまで読んだことがなかった。綾辻作品は昨年読んだ「Another」に続いてこれで2作目(「Another」は「個人的BOOKランキング2019」で紹介済み)。

 

 大学の推理研究会のメンバー7人がかつて殺人事件のあった角島の十角館で過ごし始めるが、そこで次々に殺人事件が発生・・・。それと並行して本土では以前の事件の調査が始められる・・・というストーリー。島と本土の様子が交互に語られて物語は進んでいく。「犯人は誰?」という話になるのだが、終盤はそんなのもどうでも良くなるくらい衝撃的な展開が待っていた・・・。作者の手にうまく転がされてみて欲しい。

 

 

 

「四度目の氷河期」

 ・荻原浩・著 2006年

・読んだ期間 2020年4月13日~4月17日

新潮文庫

 

 自分がクロマニヨン人の子供だと信じ込んだ少年の17歳11ヶ月までの人生を描く。石器を作ってみたりと、風変わりな日常が見ていて楽しい。ただ、結構暴力的なシーンもあり、ちょっと変わっているからこそ平穏な日常は訪れないのだろうか、その内容はなかなかハード。最後まで次々に予想外の展開が続く。果たして、彼の正体は一体何者なのだろうか・・・。

 

 ネットで検索するといくつか出てくる「荻原浩のおすすめ作品」というサイトにこの本がどれも出てこないのは何故?結構面白いですよ。

 

四度目の氷河期 (新潮文庫)

四度目の氷河期 (新潮文庫)

  • 作者:浩, 荻原
  • 発売日: 2009/09/29
  • メディア: 文庫
 

 

 

「噂」

荻原浩・著 2001年

・読んだ期間 2020年4月16日~4月19日

新潮文庫

 

 再び荻原浩作品。あるとき女子高生連続殺人事件が発生。その死体は足首を切り取られており、なんとそれはある香水のプロモーションのために意図的に作られた都市伝説の内容と一致しているという。真相を追う警察と疑われる人々・・・。一体レインマンとは何者なのか?その香水のせいなのか?というストーリー。

 

 文庫についていた帯に「えっ!と思わず声が出る衝撃のラスト1行」とあったが、実際に読んでいってそこまでたどり着いた時、即時には反応が出来なかった。少し経って「そういえば・・・」となってページを戻し、内容を確認して「やっぱそうか、うわーマジか・・・」となった。まさか最後にこんな残酷な仕掛けを用意してくるとは・・・。真相は自らの目で確かめるように!

 

噂(新潮文庫)

噂(新潮文庫)

 

 

 

「AX アックス」

伊坂幸太郎・著 2017年

・読んだ期間 2020年4月22日~4月24日

・角川文庫

 

 中1の時に僕をミステリ沼に突き落とした張本人、伊坂幸太郎さんの連作作品集。「グラスホッパー」「マリアビートル」に続く殺し屋シリーズの作品だが、過去作の登場人物について少し語られる程度なので、この作品単独で読んでも何の問題も無い。ただし他作品ネタを探すのも伊坂作品の醍醐味の1つなので、併せて読むことをおすすめしたい。

 

 殺し屋であり敵と戦う時は冷静沈着である主人公、兜であるが、妻やスズメバチには怖じ気づくというギャップが面白い。だからこそ格好良さが引き立つのかも。緊張感があるのかないのか分からない話が続いていくが、後半一気に物語が動く。伏線回収も素晴らしい。伊坂作品特有の面白さを存分に味わえる小説。

 

 

AX アックス (角川文庫)

AX アックス (角川文庫)

 

 

 

「霧が晴れた時 自選恐怖小説集」

小松左京・著 1993年(本書出版年)、1963年~1976年(収録作品発表年)

・読んだ期間 2020年5月21日~5月23日

角川ホラー文庫

 

 SFの大家、小松左京によるホラー短編集。一口にホラーとは言っても、謎の怪物が出てきたり、SFチックだったり、不思議な能力を持つ人物が現れたり、カニバリズムを取り扱ったりと、その内容は非常にバラエティに富んでいる。どれもあっと驚くラストなのが良い。

 

 個人的に好きなのは特定の地域だけ自分の、さらには物にまでドッペルゲンガーが現れ始める「影が重なる時」、謎の招集令状が届いて次々に若者が消えていく「招集令状」、思い浮かべた物を実体化させる能力を持つ男の話である「消された女」かな。勿論他にも紹介したい話があるが長くなるのでこの辺で。何しろ全15編収録と充実した内容なので。個人的にかなりイチオシな本である。

 

 

 

「押入れのちよ」

荻原浩・著 2006年

・読んだ期間 2020年6月17日~6月19日

新潮文庫

 

 またまた荻原浩。この方の小説はわりと好きかもしれない。

 こちらの本はホラー風だけどどこか滑稽な小説が9本収録されている短編集。部屋に住み着いていた幽霊の少女と暮らすことになった男を描く表題作「押入れのちよ」は短編とは言わず長編でも読みたいくらいの面白さだった。ホラーではなく普通に楽しい小説。ちよの過去はなかなか切ないが。

 

 また、猫に支配されていく家族を描いた「老猫」のように、結構怖い話もあった。「殺意のレシピ」「介護の鬼」「予期せぬ訪問者」は、状況がシリアスながらもどこか抜けていて滑稽である。この本も様々なタイプの短編が収録されているのでオススメである。

 

押入れのちよ(新潮文庫)

押入れのちよ(新潮文庫)

 

 

 

 今回は以上!残念ながら今回紹介出来なかった作品も個性的なものばかりなので、余力があれば今後紹介するかもしれない。果たして、下半期に読んだ本も合わせて、年末のトップ10に残る本は一体どの本になるのだろうか?お楽しみに。