風城峠の回顧録

ゲームや本、地学のことなど

個人的BOOKランキング2020(1~10位)

 毎年恒例・・・といってもブログを始めてからだと2回目ですが、今年も読んだ本の中から特に良かったものを10作品選んでランキングを作成しました。今年もいかにも自分らしいランキングとなったと思います。

 また、新型コロナウイルスのせいで一時期あまり家から出なかったこともあって、今年は普段の年よりも多くの本を読みました。そのため、今年のランキングは本当に過去最高レベル、ここに紹介されている作品は、自分の中では精鋭中の精鋭です。ランキングには入らなかった作品にも心を動かされたものがあるので、それについてはまたの機会に紹介したいと思います。

 

・注意事項

 気をつけて欲しいのは、このランキングに出てくるのはあくまでも「僕が今年読んだ本」であり、「今年発売された本」から選んでいるわけではありません。そのため様々な時代の作品が混ざっています。ただし、対象となるのは今年初めて読んだ本であり、今年再読した本は含めません。

 また、単純に自分がどれだけ心を動かされたかを重点に置いてランキングを作っているので、ほとんど作品の権威や名声関係なしに本を選んでいます。あくまでも個人的な好みによるランキングです。その点をご了承ください。

 さらに、個人的な趣向により、ランキング中に出てくる作者や本のジャンルがやたら偏っている場合がありますが、これも仕方ないことですので気にしないでください。

 

 ちなみに2019年以前のランキングについてはこちらを。

 

shikakuyama.hatenablog.com

shikakuyama.hatenablog.com

 

 また、今年は「2020年上半期に読んだ本10選」という記事も書きました。勿論、下半期に読んだ本の中にも面白いものが沢山あります。果たしてこの記事に紹介されている本の中から何冊が生き残るのでしょうか!?

shikakuyama.hatenablog.com

 

ついでなので+αの記事も貼り付けておきます

shikakuyama.hatenablog.com

 

 

 それでは発表を始めていきます!

 

 

10位「噂」

荻原浩・著 2001年

・読んだ期間 2020年4月16日~4月19日

新潮文庫

 

 今年は荻原浩作品を計3冊読んだ。どの作品も面白かったのだけれど、ランキングにはこの作品を入れることにした。他の2作「四度目の氷河期」「押入れのちよ」も外すのに惜しい作品である。それについては「上半期に読んだ本10選」で触れているので参照されたし。

 

 あるとき女子高生連続殺人事件が発生。その死体は足首を切り取られており、なんとそれはある香水のプロモーションのために意図的に作られた都市伝説の内容と一致しているという。真相を追う警察と疑われる人々・・・。一体レインマンとは何者なのか?その香水のせいなのか?というストーリー。

 

 文庫についていた帯に「えっ!と思わず声が出る衝撃のラスト1行」とあったが、実際に読んでいってそこまでたどり着いた時、即時には反応が出来なかった。少し経って「そういえば・・・」となってページを戻し、内容を確認して「やっぱそうか、うわーマジか・・・」となった。まさか最後にこんな残酷な仕掛けを用意してくるとは・・・。真相は自らの目で確かめるように!

 

噂(新潮文庫)

噂(新潮文庫)

 

 

 

9位「AX アックス」

伊坂幸太郎・著 2017年

・読んだ期間 2020年4月22日~4月24日

・角川文庫

 

 中1の時に僕をミステリ沼に突き落とした張本人、伊坂幸太郎さんの連作作品集。「グラスホッパー」「マリアビートル」に続く殺し屋シリーズの作品だが、過去作の登場人物について少し語られる程度なので、この作品単独で読んでも何の問題も無い。ただし他作品ネタを探すのも伊坂作品の醍醐味の1つなので、併せて読むことをおすすめしたい。

 

 殺し屋であり敵と戦う時は冷静沈着である主人公、兜であるが、妻やスズメバチには怖じ気づくというギャップが面白い。だからこそ格好良さが引き立つのかも。緊張感があるのかないのか分からない話が続いていくが、後半一気に物語が動く。伏線回収も素晴らしい。伊坂作品特有の面白さを存分に味わえる小説。

 

 ちなみに今年は伊坂作品を新たに4冊読んだ。これにて、現時点で文庫化されている伊坂さんの小説はすべて読んだことになる。追いつくのに8年かかった・・・。

 

AX アックス (角川文庫)

AX アックス (角川文庫)

 

 

 

8位「本陣殺人事件」

横溝正史・著 1946年

・読んだ期間 2020年2月1日~2月7日

・角川文庫

 

 記念すべき金田一耕助シリーズの第1作目。表題作の長さは約200ページ程と、かの有名な「八つ墓村」や「犬神家の一族」と比較するとやや小粒だが、それらに負けず劣らずの面白さである。ネタバレになるので言えないが、トリックも結末もインパクト絶大。古き良き国産ミステリーの大傑作だ。

 

 自分が読んだ角川文庫版には「車井戸はなぜ軋る」「黒猫亭事件」も同時収録されている。どちらも独特な味わいを残す作品でオススメ。車井戸~は面白いけれど後味が悪いかな。黒猫亭は終盤なかなか盛り上がる。

 

 

 

 

7位「向日葵の咲かない夏」

道尾秀介・著 2005年

・読んだ期間 2020年8月10日~8月13日

新潮文庫

 

 ある夏の日、僕はS君が家で首を吊って死んでいるのを見つけた。しかし、しばらくすると彼の死体はその場から消えてしまっていた!さらに、死後S君は僕の前に現れ、「僕は殺された」という。僕は妹のミカ、そしてS君とともに事件の真相を暴くために動き出す・・・というストーリー。

 

 とにかく読者の予想の斜め上を行き続ける小説。例えば、死後僕の前に現れたS君。普通なら霊体となって現れたと思うでしょ?しかしこの小説では・・・、まあ言ってしまうと読んだ時の衝撃を損ねてしまうので言わないですけどね。

 

 読めば読むほど謎が深まり、もう何を信じればいいのか分からなくなっていく・・・。そして衝撃の結末。読んでいて決して気分が良い小説ではないが、その驚くべき仕掛けを楽しんでみて欲しい。

 

向日葵の咲かない夏 (新潮文庫)

向日葵の咲かない夏 (新潮文庫)

 

 

 

 

6位「霧が晴れた時 自選恐怖小説集」

小松左京・著 1993年(本書出版年)、1963年~1976年(収録作品発表年)

・読んだ期間 2020年5月21日~5月23日

角川ホラー文庫

 

 SFの大家、小松左京によるホラー短編集。一口にホラーとは言っても、謎の怪物が出てきたり、SFチックだったり、不思議な能力を持つ人物が現れたり、カニバリズムを取り扱ったりと、その内容は非常にバラエティに富んでいる。どれもあっと驚くラストなのが良い。

 

 個人的に好きなのは特定の地域だけ自分の、さらには物にまでドッペルゲンガーが現れ始める「影が重なる時」、謎の招集令状が届いて次々に若者が消えていく「招集令状」、思い浮かべた物を実体化させる能力を持つ男の話である「消された女」かな。勿論他にも紹介したい話があるが長くなるのでこの辺で。何しろ全15編収録と充実した内容なので。個人的にかなりイチオシな本である。

 

 

 

5位「日本の火山に登る」

・及川輝樹、山田久美・著 2020年

・読んだ期間 2020年10月29日~11月1日

・ヤマケイ新書

 

 殺伐とした内容の作品が並ぶ今年のランキングの中で、この本は唯一の良心だと思っている(笑)。

 火山学者が火山の面白いところを色々紹介している本書。大学で地質学を学んでいる僕であるが、著者の及川さんは自分の大学、そして所属している学科のOBでもある。これは買わないわけにはいかない!

 

 最新の研究結果が多く盛り込まれており、新たな驚きがたくさんある。例えば、一万年以上沈黙を保っていたかのように思われていた御嶽山が、実はしょっちゅう噴火していたとか(千年~万年単位の、長い目で見たときの「しょっちゅう」であることをお忘れなく)。

 今年実際に行ったところについても結構書かれていたのが嬉しい。大きな岩がゴロゴロしていて進むのに難儀した北八ヶ岳の三ツ岳は比較的新しい溶岩で出来ているとか、多くの登山客で賑わう乗鞍岳ではたった500年前に水蒸気噴火を起こしていたかもしれないとか・・・。枚挙にいとまがない。

 

 地学や登山に興味のある方もない方も、是非本書を手に取って、日本の自然を味わって頂きたい。

 

 

 

4位「十角館の殺人

綾辻行人・著 1987年

・読んだ期間 2020年3月15日~3月17日

講談社文庫

 

 ミステリーの名作として非常によく取り上げられる小説。ミステリー小説は好きだけれど基本的に同じ作者の作品ばかり読んできたので、僕はこの作品をそれまで読んだことがなかった。綾辻作品は昨年読んだ「Another」に続いてこれで2作目(「Another」は「個人的BOOKランキング2019」で紹介済み)。

 

 大学の推理研究会のメンバー7人がかつて殺人事件のあった角島の十角館で過ごし始めるが、そこで次々に殺人事件が発生・・・。それと並行して本土では以前の事件の調査が始められる・・・というストーリー。島と本土の様子が交互に語られて物語は進んでいく。「犯人は誰?」という話になるのだが、終盤はそんなのもどうでも良くなるくらい衝撃的な展開が待っていた・・・。作者の手にうまく転がされてみて欲しい。

 

 

 

3位「栄光の岩壁」

新田次郎・著 1973年

・読んだ期間 2020年8月27日~9月2日

新潮文庫

 

 大学入学後に新田次郎の小説をかなり読んでいるのだが、今年はその中からこの作品をチョイス。

 遭難により足が不自由になった竹井岳彦。しかし彼は登山を諦めてはいなかった。過酷なトレーニングの末、穂高岳の岩壁に挑戦。そして彼の情熱は次第に海外に向けられることとなる・・・。

 

 昨年読んだ「孤高の人」(個人的BOOKランキング2019、2位)と並んで非常に面白い小説だった。安定の新田次郎節というべきか、主人公の周りでやたら人が死ぬところ、主人公の邪魔をしてくるクズな人物が登場するところ、そして30過ぎまで恋愛話がないところなどは「孤高の人」と似通っている。新田次郎の山岳小説の主人公が、かなりの確率でそれなりの年まで童貞なのほんと好き(は?)。

 ただし「孤高の人」と大きく違うのは主人公が結構人と関わっているところ、そして時代設定である(「孤高の人」は戦前、こちらは戦中~戦後)。

 

 登山の恐怖と興奮に溢れた傑作。自分の信念を貫き通す強さには憧れてしまう。自分も頑張りたいものだ。

 

栄光の岩壁(上) (新潮文庫)

栄光の岩壁(上) (新潮文庫)

 

 

 

2位「緋色の囁き」

綾辻行人・著 1988年

・読んだ期間 2020年9月29日~10月1日

講談社文庫

 

 叔母が運営する女学園に入ることとなった冴子。そんな中、クラスで「魔女」と呼ばれていたルームメイトが焼死体で発見された・・・。その後次々と起こる殺人事件。記憶が曖昧なため、まさか自分が・・・と恐れをなす冴子。しかも彼女は幼い頃の記憶を失っていた。一体事件の犯人とは誰なのか?そして冴子の過去とは?というストーリー。

 

 昨年読んだ「Another」と並ぶくらい面白かった作品。読みやすさと面白さでページがどんどん進んだ。時々挿入される「囁き」も不気味であった。30年以上前の作品だけど全く古さを感じさせない。登場人物が女子ばかりなので、アニメ化したら華やかになるのでは?(やめろ)

 

 ちなみに自分が購入した少し後に本作の新装改訂版の発売が発表された。なんだよ~と思ったが、今後旧版を新品で手に入れるのは困難になるかもしれないので、それはそれで良いのかもしれない。Amazonのリンクは自分が購入した旧版である。

 

緋色の囁き (講談社文庫)

緋色の囁き (講談社文庫)

  • 作者:綾辻 行人
  • 発売日: 1997/11/14
  • メディア: 文庫
 

 

 

1位「復活の日

小松左京・著 1964年

・読んだ期間 2020年1月7日~1月15日

・角川文庫

 

 今年はこの作品を1位にするべきだ、いやしなければならない、と感じた。何故か、それはその内容を見てもらえば分かる。

 

 ウイルスによって人類がほぼ滅亡してしまうという内容のSF小説。ウイルスと言えば、今年は新型コロナウイルスが世界に大混乱を巻き起こしているが、この小説を自分が読んだのはまだ日本にコロナの脅威が訪れていなかった1月上旬~中旬。まさか、この本を読んだ後に似たようなことが起こってしまうなんて思いもしなかった。今思えばあの頃はまだ平和だったな・・・。

 

 日常がじわじわと崩されていく様子が本当に恐ろしい。そして「日本沈没」でも感じたが、小松左京さんの脳内シミュレーション能力はとにかく凄い。55年以上前の小説なので、今の科学からすると古いなと感じることも多いが(これは仕方ない)、小松さんは様々な情報を噛み砕いて自分のものにする能力に非常に長けていると思う。それはもう感動するくらいに。彼によって生み出された世界には、実際に今回のコロナ禍でも見られたような事例がいくつも含まれている。とにかく、今だからこそ読んでおきたい小説だ。

 

 

復活の日 (角川文庫)

復活の日 (角川文庫)

 

 

 

 

 以上が今年のベスト10です!最後にもう一度まとめておきましょう。

 

10位「噂」荻原浩

9位「AX アックス」伊坂幸太郎

8位「本陣殺人事件」横溝正史

7位「向日葵の咲かない夏」道尾秀介

6位「霧が晴れる時 自選恐怖小説集」小松左京

5位「日本の火山に登る」及川輝樹・山田久美

4位「十角館の殺人綾辻行人

3位「栄光の岩壁」新田次郎

2位「緋色の囁き」綾辻行人

1位「復活の日小松左京

 

 今年も不穏な作品が多いですね・・・。でもここ数ヶ月はあんまりミステリーを読んでいないんですよね。では一体何を読んでいたか?そういえば、上半期に読んだ本については今までこのブログでも結構書いたけれど、下半期に読んだ本についてはまだこのランキングに登場した4作品しか紹介していません。つまり、まだまだ紹介したい作品があるということです。それについてはまた回を改めて紹介したいと思います!

 

 今回は以上!!