風城峠の回顧録

ゲームや本、地学のことなど

個人的BOOKランキング2019(5位~1位)

前編(10位~6位)はこちら

 

shikakuyama.hatenablog.com

 


 

 

 個人的BOOKランキング2019も、ついに上位5作品の発表です!ここには今年読んだ本の中で、特に面白かったものや、衝撃を受けた作品が詰まっています。どの本もかなり中身が濃いです。読書好きなら結構有名どころに感じるであろう小説ばかりなので(あくまでも個人的感覚ですが)、みなさんも知っている作品が含まれているかもしれませんね。

 

 このランキングは僕自身が作品に対して感じた素直な印象のみに基づいて作成しています。取りあえず順位付けはしていますが、同時に順位付けはあまり意味ないなとも思ったりしています。ここに挙げられている作品は特にそうです。人によって評価が分かれる作品ばかりだと思います。ここに綴られているのは、文学的な評価とかそういうのは抜きにした、あくまでも僕の個人的感想だということを頭に入れておいてください。

 

 それではランキング後半戦スタート!

 

 

5位「コインロッカー・ベイビーズ

村上龍・著 1980年

・自分が読んだ期間 2019年12月4日~12月14日

 

 生まれてすぐにコインロッカーに捨てられたキクとハシの人生を描いた小説。この作品の大きなテーマは「破壊衝動」である。それを表現するためなのか、この作品には終始荒廃した世界観がつきまとっている。キクとハシが少年時代を過ごした長崎の島の廃墟から始まり、そして物語が大きく動き出すきっかけとなった、毒物に汚染された地域である、東京の薬島。そこでは性と暴力が渦巻く、荒々しくそして汚らしい世界がこれでもかと描かれている。ここで二人の人生は大きく狂う、というか、二人はもともとどこか狂っている。この小説にはまともな人物はほとんど出てこない。狂った人物ばかり登場する。穏やかに生きている人にとっては地獄のような世界だ。争いを好まない超平和主義者であり、20歳になっても彼女すら出来たことのない自分にとっては、この小説に描かれている世界は自分とは対極の存在である。ただし、この小説は嫌いではない。3年前に読んだ村上春樹の「ノルウェイの森」では「あ~俺この小説嫌いだわ~」ってなったけど(ちなみに僕は村上春樹が嫌いな訳ではありません。「海辺のカフカ」など好きな小説もあります)、この小説はそれがなかった。あまりにも自分のいる世界とは違いすぎて、どこか吹っ切れているのが良かったのかもしれない。

 

 途中からキクとハシの様子が交互に描かれるようになる。どちらかの人生がやや明るくなったとき、もう片方はどん底のような状態になっているという対比が見事(ちなみにこの小説で二人の人生が明るくなった時期はない。あくまでも相対的にそう感じたというだけの話である)。そして最後には・・・。

 

 読むと頭の中がゴチャゴチャになってくる小説。起きる出来事の内容、そして文章の密度が高いこともあり、決して読みやすい小説ではない。だから5位になったのだけど、書きたいことがこの小説にはいっぱいある。「順位が意味を成さない」というのはこういうことだ。とにかく衝撃的な小説だった。

 

 

4位「犬神家の一族

横溝正史・著 1950年

・自分が読んだ期間 2019年4月15日~4月21日

 

 この作品の映画版がBSのどこかの局でやたらと放送されているイメージがある(案外そうでもないか)。だからタイトルだけ知っているという人も多いだろう。かつて僕もその一人だったけど、有名な作品だし、昨年から横溝正史作品を読む気運が高まっていたので手に取ってみた。横溝正史作品は昨年読んだ「八つ墓村」に続き2作品目。(この後に7位に登場した「獄門島」を読み、現在まだ読んでないが「本陣殺人事件」を購入済み)

 

 信州財界の大物、犬神佐兵衛が遺した遺産をきっかけにして犬神家の中で遺産の相続争いが起き、ついには何人もの人が何者かによって殺されてしまうというのが超簡単なあらすじ。佐清のゴムマスク姿がとにかく不気味(文章でそれが分かる)。そして殺された死体の状況もかなりエグい。これは土曜の夕方6時にアニメで放送できないですわ。ちなみに、この死体の状況にはあるメッセージが隠されている。ネタバレになるので言わないけれど、本当によく考えたものだなと感心する。

 

 あと犯人が分かったときの一族の反応が読者の気持ちを代弁しているようで面白い。どういうことかは読めば分かる。最後まで山場が続く、古き良き和風ミステリーホラー小説である。

 

 

3位「死都日本」

石黒耀・著 2002年

・自分が読んだ期間 2019年9月26日~10月4日

 

~あらすじ~

九州の霧島火山、かつての加久藤カルデラが存在している場所で破局噴火が起き、あっという間に九州南部は壊滅してしまう。その中で、火山学者の黒木と記者の岩切は、火砕サージや火砕流の間をかいくぐりながら、黒木の妻がいる日南へと向かった・・・。

 

 今年のランキングで火山をテーマにした作品は、この小説で3つ目。(そういや「キャプテンサンダーボルト」にも火山が出てくるな。じゃあ4つ目か?それを言うなら「コインロッカー・ベイビーズ」にも・・・。まあいいや)

 小松左京の「日本沈没」(個人的BOOKランキング2015で3位入賞)は完全なるフィクションで多分実際には起きない出来事だが、この小説に書かれていることはいつか起きるかもしれないという出来事である。日本ではおよそ1万年に1回もの割合でこのような破局噴火が起きているのだ。最近では約7300年前の鬼界カルデラの噴火や、約3万年前の姶良カルデラの噴火が例として挙げられる。いいかい?1万年に1回だよ?地球の歴史からしたら1万年なんて秒だよ秒。いやそれよりも短いかも。つまりね、最近(とは言っても過去10万年くらい)の日本では破局噴火がボンボン起きているんだよ。そして最後の破局噴火から7300年も経っている。別に破局噴火の起こる時期には規則性なんてないだろうけれど、統計的に見れば、近い将来(とは言っても今後数千年くらい)に日本が破局噴火に襲われても何もおかしくはないよね?この小説を読めば分かるけれど、こんなのが起きたらマジで日本は終わっちゃうよ・・・。

 

 ちなみに主人公である火山学者の黒木は理学部の地学系の学科の教授ではなく、工学部の防災工学の教授という設定が面白い。そしてなんと作者の本職は医者。地質学は独学で学んだのだろう。それでいてこの小説は地質学者からも高い評価を受けている。凄いなあ、僕も見習わなくっちゃ。

 

 とにかく日本人は、いつか日本で「南海トラフ地震」や「首都直下型地震」をはるかに超えたとんでもない災害が起きることを知るべきである。手始めにこの小説を読んでみては。

 

(余談)

 今年巨大災害ものは、他には2009年に放送されたアニメ「東京マグニチュード8.0」や、NHKが制作したドラマ&ドキュメンタリー「パラレル東京」などを見た。ねえ、本当に日本は大丈夫なの?試される大地である・・・。

 

 

2位「孤高の人

新田次郎・著 1969年

・自分が読んだ期間 2019年10月4日~10月12日

 

 高い身体能力を活かして驚異的な単独登山に挑戦し、日本の山岳会界隈にその名が知れ渡ることとなった加藤文太郎の生涯を描いた小説。この小説の主人公である加藤文太郎は実在の人物であり、「単独行」という著書を残したが、1936年、厳冬期の槍ヶ岳の北鎌尾根で遭難し、そこで30年という短い生涯を終えた。(槍ヶ岳の北鎌尾根は一般登山道が存在せず、現在でも登山の上級者しか立ち入りが許されない危険な場所である)ちなみに、この作品はあくまでも小説であり、実際の加藤の人柄とは異なっている部分があるようなのであしからず。

 

 高い運動能力を持ち、仕事での成績も良い、だけど人間関係の面では不器用な加藤文太郎のキャラクターが最高に良いんですよ!陰キャの僕は彼に本当に好感が持てる。周りから変わり者だと言われようと、自分を貫き通して山に登る、この姿勢が素晴らしい。

 そんな彼とは対照的に、彼の周囲に現れる人々は新田次郎の小説特有のクズ野郎ばかり出てくる。そういう人は何人かいるんだけど、最大の戦犯は途中から文太郎の追っかけみたいな存在になる宮村健。せっかく文太郎は安定した生活を手に入れることが出来たのに、彼の誘いのせいで文太郎は・・・。終盤は本当に悲しく、そして恐ろしく、遺された者の気持ちを思うと非常にやり切れない気分になった。読み終わった後何も手がつかなかったくらいである(大体一つ小説を読み終えた後はそうなるんだけど、この小説は特に・・・)。宮村が豹変するシーンはホラーめいたものを感じさせた。詳細は自分の目で確かめてみて欲しい。

 

 新田次郎の代表作の一つだけあって非常に素晴らしい小説。登山好きな方はもちろん、そうでない方も是非読んでみて欲しい。

 

 

1位「Another」

 ・綾辻行人・著 2009年

・自分が読んだ期間 2019年11月30日~12月3日

 

~あらすじ~

諸事情により夜見山北中へと転校した榊原恒一。そんな時、謎の少女、見崎鳴と出会う。学校にいたりいなかったりする彼女。そのことについてクラスメイトに尋ねると皆怪しい態度を取る。もしかすると彼女はイナイモノにされている?というか、そもそも存在しているのか?彼女の正体と3年3組の秘密を追い求めていくうちに、クラスは悲惨な事態に巻き込まれていく・・・。

「死者は、誰・・・?」

 

 今年は色々なミステリーホラー作品に触れてきたんだけど、その総決算となったのがこの小説。同時に綾辻行人作品はこれが初挑戦。期待通りというか、それ以上の面白さだった。ここまでページをめくる手が止まらなかったのは久し振りでしたね!文章も読みやすかったし。最後の150ページを1時間で読み終えるとは思わなかった・・・。それも図書館で借りてきた単行本版にもかかわらず。

 

 まあ途中から次々に人が死んでいくんだけど、特にあの人の死亡シーンがやばすぎる・・・。一体どういう精神状態だったんだよ・・・。(ちなみにグロさ、というか不快さで言えば「コインロッカー・ベイビーズ」の方が上だった)

 

 そしてラストのどんでん返し。これにはミステリー特有のどんでん返し大好き人間である僕は興奮しましたね!いやーそれは気がつかなかった。ちなみにこの作品はアニメ化されているんだけど、某人物の描写は一体どうしたんだろう?小説だったら字だけだからうまく誤魔化せるけど・・・。アニメの方は見たことないので、どう対処しているのか、そこが気になりますね。

 

 本当に最後まで驚きっぱなしの小説だった。というわけで1位!来年は他の綾辻行人作品にも挑戦してみたい。次はやっぱり「十角館の殺人」かな。

 

 

 

 今年のランキングは以上です!さて、最後に今年のランキングをもう一度まとめてみます。

 

個人的BOOKランキング2019

1位「Another」綾辻行人

2位「孤高の人新田次郎

3位「死都日本」石黒耀

4位「犬神家の一族横溝正史

5位「コインロッカー・ベイビーズ村上龍

6位「チンネの裁き・錆びたピッケル新田次郎

7位「獄門島横溝正史

8位「御嶽山噴火 生還者の証言」小川さゆり

9位「火の島・火山群」新田次郎

10位「キャプテンサンダーボルト」伊坂幸太郎阿部和重

 

 今年のランキングも作者やジャンルが偏ってるなあ・・・。読書好きとは言え別に凄くたくさん本を読んでるわけではないし(今年は新規で読んだ本は約30冊ほど)、また今年はその中に堅い学術書とかもわりと含まれているので、偏ったランキングになるのは仕方がないこと。特に今年は大学の図書館にある新田次郎全集を5冊も読んだからなあ・・・。新田次郎は人間と自然との闘いを描いた作品を多く書いているので、そういうのが好きな方にはオススメです。あと目立つのはミステリー小説。中1の時に伊坂幸太郎の小説に出会ってからすっかりミステリファンになってしまったので、来年も幅を広げながら色々と読んでいきたい。(ちなみに伊坂幸太郎の小説で一番好きなのは「ラッシュライフ」です)

 

 来年も、十分な量の本を読むことができたらランキングを作成するのでお楽しみに。また今年はブログの更新はこれで最後にしたいと思います。皆さん、よいお年を。